月末の金曜日は午後3時で退社、プレミアムフライデー

プレミアムフライデーなるものを知ったのは、年度末に向けて佳境になろうかという頃だった。金曜日の仕事を午後3時で上がり、金曜日の半日と土曜日・日曜日の2.5日をプレミアムに楽しもう、というものらしい。土日は休みと相場が決まっている人が考えそうなことだ。

記事掲載日:2017.07.01(この記事は 2019.06.15に修正されました)

梅宮はパソコンの時計に目を向け、大きく息を吐いた。
あと15分で15時だ。会社からはできる限り退社するように促されている。しかし、例年年度末は追われるように過ぎる忙しさ。ましてや月末となればなおさらだ。さらに今年は最後の出勤日でもある。

「先輩、あがれそうですか?」
向かいのデスクにすわっている定吉が声をかけてきた。梅宮が渋い顔を見せる。
ノー残業デーといわれ、週に一度は仕事をしないようお達しがあり、その分、他の日はそれまで以上に忙しい状態になった。そこにきて15時に上がれという。

「ですよね。僕も無理です」
部署によっては月末の金曜日に上がれるはずがない。
知り合いの会社などは土曜日営業なので、金曜日に15時に上がっても何の意味もない。
定吉が仕事を終わらせることを諦め話かけてきた。

「プレミアムフライデーっていったい、誰のためのものですかね。僕の友だちなんて正社員じゃないから、早く上がってもその分、時給が削られるって嘆いていましたよ」

確かにそういうこともあるのだろうな、と梅宮は思った。
業種によっては導入すらできないだろう。

もし本当にすべての国民に対し、プレミアムフライデーを推奨するのであれば、全国民に義務化しなければ無理だ。

「何か、新しい制度ができるたびに、損している気分になりますよ」
定吉が両手を頭の上で組み、天井を見上げた。

「結局、一部の人間だけがそういったライフスタイルを送れるわけですからね。まぁ、ライフスタイルを送れないのはいいんですけど、仕事をすれば帰らないのかと目を細められるし、仕事を切り上げようにも先方は仕事をしているし、プレミアムフライデーなので今日はできません、ってわけにもいきませんよね」
定吉の嘆きに、梅宮は人気の少ないオフィスを眺め、パソコンを打ち始めた。

あとがき
年度末の超過密時期に「プレミアムフライデー」の導入を知った。もしこの最後の金曜日に15時にあがってしまったら納期が間に合わず、債務不履行になりかねなかった。それともプレミアムフライデーは正当な理由になるのだろうか。

月末の金曜日への導入は難しいと、第2週、第3週に移動している会社もでてきているが、大半の会社は導入できずにいるのではないだろうか。何か新しい制度ができるたびに、ライフスタイルの格差が広がっているように思えて仕方がない。国民の大半が享受できない制度とは、一体、誰のための制度なのか、どれほどの意味があるのか。享受できない私には「プレミアムフライデー」は無関係の世界だ。

松江ブログ(M2エムツー)

HOME > CATEGORY LIST > つぶやき隊 > ショートストーリー > 月末の金曜日は午後3時で退社、プレミアムフライデー

ページトップへ