MATSUTE BLOG松江ブログ（M2エムツー）

記事掲載日：2017.06.13（この記事は 2019.06.15に修正されました）

容器を手に取り、裏書きを見る。
１日１錠、１週間に２～３錠まで使用可能、とある。
内容量　12錠、4800円。

高い。
4800円÷12錠＝400円

美弥は容器を元に戻し、歩き始めた。
家に帰って食事をしていると急にあの薬のことを思い出した。もし本当に好きなだけ食べることができ、太らないのだとしたら１錠400円でも安いのかもしれない。だが、12回も使うだろうか。それに本当に効くのだろうか。美弥は何度か同じことを考えていた。

あれ、ない。
数日して薬局屋の前を通りかかると、あの薬はなくなっていた。売り切れたのか、回収されたのか。なくなってしまうとなんだか無性に気になってきた。美弥は家に帰りパソコンを立ち上げた。薬の名前が思い出せない。そもそも名前など書いてあっただろうか。美弥は思いつく限りのキーワードを打ち込んだ。

「錠剤」「やせる」「バイキング」「食べ放題」「太らない」「いくらでも食べられる」「12錠」「4800円」・・・

片っ端から検索したが見つからなかった。
美弥はため息をついた。

あのとき、買っておけばよかった。もしあの薬があれば好きなだけ食べることができたのだ。だがもし、好きなだけ食べられる効果はあったものの、太らないという方に効果がなかったとしたら、ひどい代償を支払うことになっただろう。いや、それよりも常に服用するようになり、胃袋が驚くほど大きくなってしまったとしたら、食費を稼ぐために仕事をすることになるのではないだろうか。

美弥は、やはり買わなくてよかったのだ、と自分に言い聞かせた。
だが、心のどこかで、一度くらい試してみればよかったと残念な気がして仕方がないのだった。

あとがき

こんな薬はない。売っていたのを見たこともない。
梅干しダイエットの効き目がなかったときに「もしあったらなぁ」と思いついた夢（幻）の薬だ。だがもし本当に、そんな薬があったとしたら使ってみるだろうか。